ガラスのカツラ(再改訂版)

ガラスのようにツヤツヤで、ズレやすいカツラ・・・
人は頭皮を隠して、それを被る

作:身内うすげ


第1話 「千のカツラを持つ少女」


北島ヅラは、どこにでもいる平凡な中学生だった。
放課後は家計を助ける為、母の仕事を手伝い「出会い系サイトのサクラ」をやっていた。
そんなある日の下校途中、ヅラは後ろから急に声をかけられた。
「そこのあなた!」
驚いて振り向くと、直径1メートルはあると思われるアフロヘアーの中年女性が立っていた。
彼女は通称「ツルハゲ先生」と呼ばれている、元大女優の鶴禿千草であった。
ツルハゲ先生「あなた、ヅラ女優にならない?」
ツルハゲ先生のあまりの迫力にビビるヅラ。
ヅラ「え、遠慮します。これから家に帰って、スパムメールを出さなきゃならないんで・・・」
そのとき突風が吹き、ツルハゲ先生のアフロのカツラがずれ、思いっきりツルツルの頭皮が露出した!
「きゃ〜!」悲鳴をあげて、脱兎の如く逃げるヅラ。
「あの少女、私の目に狂いが無ければ、千のカツラを持つ少女!」
周囲の人々の驚愕と好奇の視線にも気が付かず、一人ほくそえむツルハゲ先生であった。

第2話 「生えない天女」


「女優になれば、タッキーにも会えるかもね。」という、ツルハゲ先生の甘言にまんまと乗せられてしまった北島ヅラは、ツルハゲ先生が主催する「劇団 つるはげ」に入団してしまった。
ツルハゲ先生は、「生えない天女」という有名な劇の上演権を持っているらしい。
ツルハゲ先生「ヅラ、『生えない天女』の正体は何だと思う?」
ヅラ「そんなこと、いきなり聞かれても・・・」
ツルハゲ先生「あれはカツラなのです!」
ヅラ「え〜ッ!?カ・・・カツラ!!」
「ヅラ、あなたそこでカツラをやってごらんなさい。」
「こうですか?」
水中で揺れるワカメのような演技のズラに、ツルハゲ先生の「怒りの膝カックン」が炸裂!
「きゃあ!」悲鳴をあげて、地面に顔から倒れるヅラ。
「先生、何するんですか!?」大量の鼻血をたらしながら、抗議するヅラ。
直径1.5メートルのアフロヘアーを揺らしながら、ツルハゲ先生はヅラに言った。
「ヅラ、カツラがズレますか!悲鳴をあげますか!」
そういうツルハゲ先生のアフロカツラは、思いっきり後方にズレていて、ハゲ丸出しであった。
しかし、恐くてとてもツッコメないヅラであった。
「今にわかるわ、今にね。」先生はお決まりのセリフを言って、直径1.5メートルのアフロカツラを引きずりながら
去って行った。

第3話 「はげくらべ」


樋口一毛の名作「はげくらべ」の最終オーディションで、北島ヅラは宿命のライバル、髭川亜弓(ひげかわあゆみ)と主役の座を争う事になった。
髭川亜弓は、有名ワイドショー司会者と、有名お笑い芸人の間に生まれた「ヅラブレット」だった。
ただでさえ貧乏なヅラに勝ち目は無いというのに、髭川亜弓のとりまきによって、ヅラの舞台用のカツラ(赤いリボン付き・おさげスペシャル)が隠されてしまった。
「どうしよう、これじゃあ、タッキーどころか、イノッチにすら会えないわ。」と、半泣きのヅラ。
ヅラのピンチを見かねた共演者の綾小路君が「僕のでよかったら」と、自分のカツラを脱いで差し出した。
でも、綾小路君の後ろ髪をちょっとだけ伸ばして結んだだけのバレバレのカツラでは、金髪縦ロール1メートルカツラの髭川亜弓に、勝てる訳がなかった。
その時、ヅラの元に宅配便が届いた。
中には、紫色の見事なバカ殿カツラが!!
添えてあった手紙には、「いつでもあなたを応援しています。あなたのファンより」と書いてあった。
「ありがとう。『紫のヅラの人』・・・、私、頑張ります!」

第4話 「毛抜けの人」

北島ヅラは「毛抜けの人」の主役、ハエンのオーディションを受ける事になった。
「毛抜けの人」とは、『ハゲ』『ブス』『デブ(しかも貧乳)』という、女としては地獄のような三重苦を背負った実在の少女、ハエン=ケガーが、優秀な植毛職人で、エステテシャンでもあるハゲバン先生との出会いによって、ハゲとデブを克服するという感動の物語である。(ブスと貧乳は、一生治らなかった。)
ヅラはどのようにハエンを演じていいのかわからず、近所の公園のベンチで途方に暮れていた。
「だって、ハエンは私と正反対なんですもの♪」と、見事なナルシストっぷり。
そのとき、公園の茂みの一つが、いきなり立ち上がった!
茂みに見えたのは、ツルハゲ先生(のヅラ)であった。
「ヅラ、ハエンの気持ちを理解する為に、たった今から、あなたはハエンとして生活するのよ!」
ヅラは「またこのパターンかよ〜。」と思ったが、もちろん口には出さず、「わかりました。」と答えた。
その言葉が終るか終らないうちに、ツルハゲ先生は隠し持っていた電動バリカンで、ヅラの髪の毛を刈ろうとした。
思わずよけるヅラ。
「ツルハゲ先生、何をなさるんですか!?」
「ヅラ、あなたは今、バリカンをよけましたね?ハエンは200キロ近いデブなのよ!デブがそんなに敏捷に動けるワケ無いでしょ!!」
「ハッ!それもそうだわ。すばしっこいデブって見た事が無いし、動きが速いと、カツラがずれる恐れだって・・・」何も言い返せないヅラ。
ヅラの顔の上半分には例の縦線が入っていた。
そのとき、「うぐぇッ!」と蛙のような声を出して、ツルハゲ先生が倒れた。
顔面には例の縦線が入り、呼吸も荒い。
もちろん黒目は消えている。
「ヅラ、私はもう、永くない。ゲホゲホ・・・」
「えッ!?」
「最近、眩暈がするのよ。歩くのがものすごく辛いし、何より頭がすごく重い・・・きっと脳腫瘍だわ・・・」
「そんな大きなカツラをかぶっているからでは?」とヅラは思ったが言えなかった。
ツルハゲ先生のアフロかつらは、今や直径2メートルにもなっていた。

続く―


<次回予告>

北島ヅラは、200キロまで体重を増やして役作りをした甲斐があって、見事「毛抜けの人」のオーディションに合格した。
しかし、永遠のライバル、髭川亜弓とのダブルキャストであった。
ヅラはハエンがハゲでデブだった頃の役で、ヒゲ川亜弓は植毛とダイエット後のハエンの役であった。
プライドをかなりキズつけられたヅラ。
しかし、何とか公演は大成功。
3日間のダイエットで何とか元の体型に戻ったヅラは、今度は劇団バーコードとの共同の舞台「真夏の夜のハゲ」で、妖精パンチョをやることになった。
しかしまた、例によってツルハゲ先生が・・・

次回から始まる新シリーズ「百万のカツラ」をお楽しみに!

©身内うすげ 2002/04/08(2010/11再改訂)
(C)Usuge Miuchi

※転載は絶対にやめてね!
みんなにバカにされちゃうぞ!!(うすげ)


<残念なお知らせ>

作者の身内うすげ先生が、急性想像妊娠でご出産の為、しばらくの間「ガラスのカツラ」は休載します。
再開は「ガラスの○面」が完結した頃になると思われます。
代わりに次回からは、臼井王女先生原作の「カツラ大戦―走れ帝国カツラ団」が始まります。
お楽しみに!

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